STORIES:OKUROJI
【PEOPLES】#2 前編
靴下作り35年のプロに出会えるソックス専門店

2020.10.04
GLEN CLYDE SOCKCLUB TOKYO
人の顔が見える店は、つい通いたくなる。名物店主がいる店ならなおさらだ。OKUROJIの“人”にフォーカスし、生い立ちやこの仕事を選んだきっかけ、お店のことなど、その「人」の魅力に迫ります。第二回は、『GLEN CLYDE SOCKCLUB TOKYO 』の橋本満さん!
Photo: Saori Tao Text: Mayu Sakazaki
19歳から約35年、ソックス一筋!
僕はもともと好きなことを仕事にしたいというよりも、今やっていることを好きになればいい、というタイプ。19歳だった自分を最初に拾ってくれた会社が靴下を扱っていて、意外と奥深いなと思ってやっているうちに気づいたら30年以上経っちゃった。でもそうやって話すとみんなびっくりするんですよ。意外とひとつのことを長くやるって価値になるんだなと気づいたのが25年目くらいのとき。そんなにかかるのもどうなのかっていうのはあるんだけど(笑)。

独立して会社を立ち上げたのは1992年の冬で、最初は工場さんの作業場を間借りして机ひとつと電話一本で始めました。その頃はオリジナルブランドじゃなく、他社の製品を請け負うOEMとしてスタートして、企画も営業も出荷も全部一人でやってました。ものづくりの現場に近いところで仕事がしたかったから、工場長に怒られながら機械のこととか色々教えてもらって。前の会社ではあんまり現場とのやりとりがなかったから新鮮でしたね。
90年代のスニーカーブームの到来で、アンクルソックスを開発したらそれが大ヒット。96年には間借り生活も終えて千駄木に本社を構えました。ちなみにGLEN CLYDEっていう会社名は20歳くらいのときにロンドンでご馳走になったスコッチウイスキーの名前。今は全然売ってないものだけど、その美味しさが忘れられなくて、そのまま名づけたんです。最近はおかげさまで覚えてもらえるようになって、ブレずに続けてきてよかったと思います。長年かけてやったことは真似されにくいし、今うちで働いている若い人たちと一緒に成長を感じられるっていうのはすごく嬉しいこと。
欧米で評価された最初のオリジナルブランド「CHUP」
アンクルソックスのヒットでメンズソックスのマーケットが似たようなものばかりになってしまったこともあり、もっと靴下の魅力が伝えられて、海外でも評価されるものづくりというのを意識するようになって、2009年にオリジナルブランド「CHUP」を始めました。


フェアアイルやアメリカンインディアンのような伝統的な民族柄をモチーフにして、先住民の人たちは身にまとうためのデザインをアイデアにしています。靴下にも文化みたいなものを取り入れたくて、アイヌの文献や言い伝えなんかを探して、見つけたのが“CHUP”という言葉。太陽、月、星といった空に輝くものすべてをそう呼んでいたみたいで、それをブランド名にしたんです。
日本はわかりやすく四季の移り変わりがあることも影響するのか、色の使い方や配色が幅広くユニーク。日本人の色づかいが面白いってことで海外ですごく評価されて、7万足作っているうちの8割がアメリカやヨーロッパで売れてるんです。「chup socks」っていうと通じるみたいですよ(笑)。派手に見えるけど意外とどんな格好にも合うので、うちの定番人気ですね。
永久保証ソックス、幻のコットンなどを次々にリリース!
次に作った「relacks」はものすごく伸びる柔らかい生地のソックスで、どんな人にも合うからサイズはワンサイズだけ。最初は介護用の楽に履かせられる靴下ってことで作ったものなんだけど、今では目玉商品なんです。


僕が若い頃から「いつか作りたい」と思っていたのが、「Sea island cotton」のソックス。カリブ海のごく一部の国でしかとれない世界最高級のコットンで、油脂分が多いから本当に柔らかくてクリームのような手触り。ずば抜けて質の高い繊維だから、使うのにも許可が必要で、世界で6社くらいの靴下メーカーにしかないものなんです。これはぜひ一度試してみてほしい!
