STORIES:OKUROJI
【大人のみだしなみ講座】#1 前編
VANのスウィングトップジャケットで大人への第一歩

2020.08.24
大人のみだしなみってなんだろう? 画家であり、小説家でもある23歳のKaito FukuiさんがOKUROJIのお店を訪れ、人生の先輩たちにみだしなみのアドバイスをもらいながら、”大人”について考えていく連載です。第一回は、VANの山口明宏さんにアイビーファッションの魅力についてお聞きしました。
※今回の取材は、OKUROJI店オープン前のため蔵前店にお邪魔しました。
Photo: Saori Tao Text & Illust: Kaito Fukui
1948年に誕生した、VAN。1950年からアメリカンカルチャーを取り入れ、日本に、アメリカントラディショナルを浸透させ、60年代に流行した「アイビールック」や「みゆき族」それに、ボクが無意識に知っていた。「T・P・O」や「トレーナー」「スウィングトップ」という言葉もVAN出身。小さい頃から憧れていた、あの紺ブレが似合う大人になりたいボクは、ちょっとドキドキしながらVAN SHOP 蔵前店へ向かう。

長い梅雨が明け、鬱陶しい偏頭痛も消え去ったら、お洒落をしてどこかへ出かけたい。いつものように、チノパン、デニムに白Tもいいけれど、夏に誕生日を迎えるボクは夏本番を目前にいつになったらカッコいい大人になれるのか真剣に悩んでいる。VAN SHOPへ向かうから、ボクなりに考えた「TPO VAN SHOPバージョン」はこんな感じ。

いつもの、チノパンに白T。気温は35度の真夏日だけど、ここは大人にならなきゃと、暑いけど白シャツを着た。VANと言ったら、紺ブレが似合うかっこいい大人のイメージ。お店もきっと、上品でなんかちょっとムーディーな雰囲気なんだろうな…。そんな事を思いながら自宅を出て、渋谷方面へ電車に揺られ少し遠回りだけど、せっかくなので「みゆき族」がいた銀座を通って、蔵前へ向かった。蔵前の駅から歩いて大きな通りを歩いていると、VANの看板が見えて少しシャンとする。
「パパとママに挨拶へ行く時はジャケットを着てね」
ふと、彼女の一言を思い出す。ジャケット、紺ブレ、ネクタイ、ピカピカの革靴…チノパンに白T、一生スニーカーだと思っていたボクもいつしか、TPOの場面が増え、気にすることが多くなった。大人の階段を一歩上るように、VAN SHOPへやって来た。ここへ来る途中、想像していたイメージよりも一階は、大きな窓に囲まれ明るくカジュアルな雰囲気。ボクが想像しているアイビーファッションはいくつものルールがあって、靴下から下着のパンツインナーのタンクトップも、シャツはボタンダウン。パンツはこれじゃないといけない。と少し堅く簡単に手の届かないイメージだ。けれど、お店の一階はボクが想像していたよりも明るくてTシャツや、キャップも並んでいた。お店に入って、キョロキョロしていると
「こんにちは」
と、紳士的に挨拶をしてくれたのは、VANの山口明宏さん。

山口 明宏(やまぐち・あきひろ)さん
株式会社ヴァンヂャケット営業本部 本部長。入社28年目のベテラン。最近は多忙でなかなか休みが取れないが、趣味はサーフィンとゴルフ。サーフィンは千葉の海に行くことが多い。OKUROJIで気になっているお店はまんてん鮨。
ダンディな雰囲気が溢れ出ている。ボクが想像している、アイビーファッションが似合うかっこいい大人は、山口さんのような人だ。パンツから、シャツ、ネクタイもジャケットも自分に合ったサイズで清潔。シティボーイのお手本。と言ったら失礼かもしれないが、ボクは山口さんを目指したい。山口さんの趣味はサーフィン。休みの日には、海へ行きのんびり波に乗るそうだ。ボクのコンプレックスの中にサーフィンで焼けた、日焼けがなかなか落ちず、似合う服が少ない。というのがある。同じサーファーの山口さんに、聞いてみるとFWのフランネルシャツをお勧めしてくれた。

袖を通すと、気のせいか妙に優しかった。
「あれ? サイズぴったり!」と、ボク。
「そう、VANのシャツは昔から少し大きめで身幅、肩幅が広いんだよ」と、山口さん。
ボクは、意外と身長のわりに肩幅が広い。シャツを買う時は、身幅肩幅に合わせてワンサイズ大きめを買うのだが、そうすると袖が長くて、ブカブカになってしまう。けど、VANのシャツは本当にぴったりだった。
「アイビーファッションはもともとアメリカの大学のフットボール選手が好んで着ていたファッションから始まった」と、山口さんがさっき教えてくれた事を思い出した。
「VAN は昔からトレンドに左右されずこのアイビーファッションの歴史を大切に、長く愛せる服作りをしている」、山口さんのこの言葉もしっかり感じた。

「突然ですが、ずっと紺ブレに憧れていてさらっとかっこよく着たいのですが、どう、何に合わせたらいいのか分からず、去年も一昨年も買えずにいます。アイビーファッションには、決まったルールはあるんですか?」と、もうこの際羞恥心も何もかも捨てまっさらな心でアイビーを教わろうと、思い切って聞いてみた。
山口さんは、ニコリと笑って「これといって決まったルールは無いよ。紺ブレもそうだけど、着ている人に似合っているかどうか。これが一番大事だよ」と、教えてくれた。
「着てみる?」そう言って、お店の二階へ案内してくれた。
二階へ上がるとそこは、ボクがここへ来る前に想像していた上品で、ムーディーな雰囲気。そこには、憧れの紺ブレはもちろんいつかは着てみたい、セットアップやネクタイも並んでいた。憧れの紺ブレを目の前に、ドキドキしてきたボクは、やっぱり今日は、着ないでおくことにした。
山口さんは、笑って「これ似合いそうだよ」と、スウィングトップを持ってきてくれた。
後編へ続く。
Profile
Kaito Fukui
画家、小説家。1997年東京都出身。サーフィン中心の生活から都心生活に移り3年。離れて再認識した、海、サーフィン。ディアル生活を考える日々。anna magazine のweb メディア“container“にて「えもーしょん」連載中
Instagram : @kaito_fukui @vacanceshop