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【OKUROJI スイーツ図鑑】#3
ワインとチーズケーキで楽しむ、バルの享楽。

<small>【OKUROJI スイーツ図鑑】#3</small><br/>ワインとチーズケーキで楽しむ、バルの享楽。 <br>
グルメ

2021.03.25

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これまでに数々のスイーツを食してきたスイーツライターchico さんがOKUROJI の名店を巡り、名物スイーツの魅力をレポートする「OKUROJIスイーツ図鑑」。No.03 は『ニクバル CANIVOR』のバスクチーズケーキ。

Photo:Kenji Nakata Text:chico

ニクバルならではの、隠れ名物スイーツ。

OKUROJIのレンガアーチの続きのような空間に、不思議と調和するシャンデリア。壁では描かれた牛(なんと油性ペンで手書き!)が覗き込み、ショーケースには誘うように美しい肉が並んでいる。
その名の通り、『ニクバル CANIVOR』はお肉メインのバル。お菓子屋ではないけれど、だからこその甘い喜びが待っていました。

ニクバルならではの、隠れ名物スイーツ。

お肉のメニューに並んで、黒板に踊る『バスクチーズケーキ』(800円)の文字。“2種のクリームチーズを使った”と書いてあるけれど、2種ってどんな?
「牛乳は牛が生み出す自然のものだから、季節ごとに乳脂肪分や塩分が変わります。当然チーズも季節ごとに少しずつ変化します。それに人の食べたい味も夏と冬では違いますよね。そういったことを考えて、使うチーズも季節で組み合わせを変えているんです」とパティシエの伊藤挙さん。

クセが少なく安定した北海道産クリームチーズをベースに、ブレンドするクリームチーズを変えるそうで、「夏なら塩気がある『キリ』、冬ならコク深い『ブコ』といった具合。今日はコクと酸味がバランスいい北海道産『リュクス』です」。

運ばれてきたチーズケーキの断面美といったら! ほんのりと艶を帯びていて、中心の方は今にも溶け出しそうにとろりとしています。
「最初はいかにもバスクチーズケーキらしく、しっかり焼いてもっとほろっとした食感にしていたんですけど、より滑らかな方が日本人の舌にあっていると思って。それにうちはお肉の店だから、食後でも食べやすいことが大切。だから口溶け良さを特に意識して、アントルメからカットできるギリギリまで柔らかく仕上げています」。
目指すはバスクチーズケーキの中でもよりレアな口当たり。配合の工夫に加えて、湯煎焼きでゆっくり火を通すようにしたことで、表面はしっかり焼きつつ、自然と中はとろり柔らかに。

フォークを入れたら気持ち良すぎました。テリーヌみたいに柔らかでとろーり。いただくと、まったり舌にととろけていく感覚は色気すら感じます。たちまちミルキーなチーズの香りが口いっぱいに!
その口溶けの良さからか、ボリューミーな見た目よりずっと軽やかな食べ心地。お肉の後の女性でもぺろっといく、というのもわかります。

ケーキの横にちょこんと添えられているのは2種の塩。イスラエルの岩塩『ピンクロックソルト』と、粒が大きめでサクサクとしたピラミッド状のイギリス産海塩『マルドン』です。
「まずはそのまま味わってもらって。あとは甘さ控えめの生クリームや塩で自在に、好みの味を見つけてください」。
味変、楽しいんですよね。いろいろやってみよう。

塩を少しつけると、より甘さが引き立ち味の輪郭もくっきり浮かび上がる感覚!
ピンクロックソルトの方は塩自体に仄かな甘味もあって、柔らかくチーズケーキの旨味を引き立ててくれるよう。一方マルドンはキリリと塩気があり大粒なので、ケーキも大きめにとるといい感じに調和する気がします。
生クリームをつければチーズの乳味を鮮やかに印象つけつつ、口当たりもさらに滑らかに。個人的ベストは、クリームたっぷり+ピンクロックソルトを少々。チーズ感がぐっと深まり、コクとキレがなんともいい塩梅になるのです。

ここでさらに伊藤さんから朗報が! 「塩をトッピングしたチーズケーキは、コーヒーだけでなくワインともとてもよく合うんですよ」。
そう、ここはバル。ワインが揃っているのも強みです。このチーズケーキにはどんなワインを合わせたらいいですか?

パティシエがワインエキスパート!

「そうですね、『ビコーズ アイム ブラン・ド・ブラン』はどうでしょう? さっぱりしていてグビグビいける気軽なスパークリングなので、チーズケーキがもっと食べたくなりますよ(笑)。
ビコーズシリーズは慣れない人にも門戸を広げるような、地域×品種のラインナップがわかりやすく揃っていて、ワイン入門にぴったり。これですとフランスのシャルドネなんですけど、完全に白ぶどうだけのスパークリングって実は珍しくて……」。
お菓子への質問だけでなく、ワインの質問にもスラスラどこまでもこたえ続ける伊藤さん。襟元を見ればブドウのバッジがキラリ。もしやパティシエでありつつ?
「はい、自粛期間を利用して、ワインエキスパートの資格を取りました」。
お酒とスイーツのペアリングも自在というわけです。
では早速、チーズケーキをまったりとかしたところに、スパークリングをシュワっと一口……

パティシエがワインエキスパート!

「わ!」思わず歓声が出てしまいました。まず、チーズのフレッシュさを際立たせてくれて、かと思えば甘さをキリッと爽やかにリセットしてくれるよう。これ、ケーキもワインも両方永遠に進んでしまう悪魔的ペアリングです。
お肉後のデザートにはもちろん、カフェタイム(14:00〜17:00)に昼下がりからこの空間で、お酒とチーズケーキというのも最高かも。その背徳感もクセになりそうです。

パティスリーでは出会えないプリン。

パティスリーでは出会えないプリン。

もう一つの名物デザートが『濃厚イタリアンプリン』800円。“イタリア産マスカルポーネを使ったかためのプリン”、と書かれたメニュー説明を横目に、なるほどかためプリンなんですね、と思いながらひと匙いくと、あれ?世のかためプリンとはまた違うテクスチャー。もちろんなめらかプリンとも全く違う。
「卵は使うけれど卵白でかたさを出すのでなく、マスカルポーネで表現しました」と伊藤さん。
だからかためといえどもプリッとしているのでなく、しっかりしたボディと滑らか&まったりが見事に融合しているのです。

しかも、「マスカルポーネは普通、ケーキ屋さんでは出せないくらいの量を使いました」と、原価割れをものともせずたっぷりと。さらに牛乳でなく100%生クリームを使うからこっくり、どこまでも濃厚です。

こちらには少しだけ甘口のリースリングをペアリング。ブドウの仄かな酸味と甘さが、濃密なプリンにゆったり寄り添うよう。至福とはこのことです。
3月中旬からはチョコバスクチーズケーキもスタートするとか。またデザートとワインに溺れに、ふらりと寄り道してみよう。

Profile

Profile

伊藤挙さん(右)
パティシエ、ワインコンシェルジュ。有名パティスリーを経て、ホテルでデザート開発を担当する。その後「お客さんの顔が見える所で仕事をしたい」との思いから、カフェやパンケーキ店へ移り経験を積む。2020年3月より『ニクバル CANIVOR』のシェフパティシエに。休日も趣味と勉強を兼ねてカフェ巡りに勤しみ、愛犬とカフェに出かけることもしばしば。好きな芸能人は元欅坂46の平手友梨奈。OKUROJIでは、『パティスリー パロラ』がお気に入りで、休憩中にカヌレを楽しんだり、休みの日にも訪れてパフェを食べることも。いつも行列している『天ぷら 大塩』も気になっているとか。

河野大吾さん(左)
『ニクバル CANIVOR』店長。赤坂プリンスホテル『トリアノン』で10年ほど調理師として研鑽を積んだ後、『ニクバル CANIVOR』の運営会社へ入社。グループ店である藤沢の焼肉店で15年ほど務めた後、『ニクバル CANIVOR』店長を任される。日曜大工が趣味で、休日にはちょっとした棚など自作してしまうとか。また、熱帯魚(国産グッピー専門)を眺めて過ごす時間も大切にしている。好きな芸能人は土屋太鳳。OKUROJIでは『天ぷら 大塩』が好きで通っているそう。

chico(チコ)
スイーツライター。食への興味が抑えられず1999年、モデルからフードライターへ転身。その後お菓子の知識を競うTV番組への出演をきっかけに、本格的にスイーツライターとして活動するようになる。スイーツのトレンドに精通し、『anan』や『Hanako』、『BRUTUS』、『エルグルメ』はじめ多数の雑誌やweb、TVでスイーツ記事の執筆やスイーツ特集の企画監修を行うほか、ギフトのセレクトショップ『g GIFT AND LIFESTYLE』やECサイト『SALUS ONLINE MARKET』などのスイーツ監修も手がける。『anan』で『Food News 〜chicoのお菓子な宝物』、『SALUS』で『もらって嬉しい手土産スイーツ』を連載中。『東京の本当においしいスイーツ探し』シリーズ監修。共著に『東京最高のパティスリー』。

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