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【PEOPLE】#11
“手織りのネクタイ”に惚れ込んだ、アパレル一筋のショップマネージャー

<small>【PEOPLE】#11</small><br/>“手織りのネクタイ”に惚れ込んだ、アパレル一筋のショップマネージャー<br>
ピープル

2021.03.11

KUSKA & THE TANGO

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人の顔が見える店は、通いたくなる。名物スタッフがいる店ならなおさらだ。毎回OKUROJIの“人”にフォーカスを当て、生い立ちやこの仕事を選んだきっかけ、お店のことなど、その人の魅力に迫ります。第11回は、『KUSKA & THE TANGO』の向山弦さん。
 
Photo : Saori Tao  Text : Mayu Sakazaki

ものづくりの“背景”を語れる仕事を

ものづくりの“背景”を語れる仕事を

学生時代から洋服が好きで、高円寺や下北沢の古着屋によく通っていました。中学生の頃はただ格好つけたかっただけだったんですが(笑)、徐々にヨーロッパものの古着に惹かれるようになったんです。やっぱりドレス発祥の地なので、ジャケットやコートの作りを見ているだけでも楽しかったんですよね。

大学で経営を学んでからは、ずっとアパレル関係の仕事をしてきました。最初は服飾雑貨の営業をしていたのですが、そこで低価格のアパレル小物の生産背景を一から学んだことで、だんだんと日本製のものに携わりたいという思いが強くなってきたんです。それで木工雑貨の会社に移り、店舗やディスプレイ用のハンガーを売ったり、百貨店向けにハンガーのブランドを作ったりしていました。

『KUSKA & THE TANGO』に入社したのは、日本製なのはもちろん、ひとつひとつ手織りでネクタイを作っている、という生産背景に魅力を感じたから。大量生産や機械生産の仕事を経験してきたからこそ、どう作ってどう売っているかというビジネスの背景にまず惹かれたんです。ネクタイとしては高級品だと思うのですが、それだけ価値がある、本当にいいものなんですよ。

実は去年の4月に入社したばかりで、コロナ禍の真っ只中でした。転職してすぐに2ヶ月の自宅待機で大変でしたが、ゆっくりできましたね(笑)。今は店長として店舗を一人で担当しつつ、百貨店やセレクトショップへの卸もやっています。直営店はここだけなので、KUSKAの全商品をOKUROJI店に揃えています。

京都の着物「丹後ちりめん」をネクタイに応用

もともと、KUSKAは京都の丹後というところに本社があって、丹後ちりめんという着物を作っていたんです。ただ、今は時代とともに着物の生産量が減ってしまっているので、今の3代目の社長が「手織りに特化した別のものを作りたい」とネクタイのブランドを立ち上げたのが10年ほど前のこと。当時は機械織りといって機械でちりめんを作っていたんですが、それをすべてやめて、木製の織り機での生産に転換したんです。

京都の着物「丹後ちりめん」をネクタイに応用
店内には「10年前に今の社長が手作りで作ったもの」という織り機が。着物の伝統がネクタイに宿っている。

職人たちがその織り機で毎日手織りをして、縫製して販売しています。一人の職人が一日に織れる生地は、ネクタイで2本分ほど。あまり生産スピードを上げてしまうと風合いが損なわれたり、品質に影響が出てしまうんです。少しずつしか作れないからこそ、その価値に魅力を感じる方におすすめしたいですね。

着物から派生したブランドなので、独特の生地のシャリ感だったり、光の反射だったり、直接見て触っていただけると違いがわかると思います。機械織りだと平面的で綺麗なデザインになるんですが、手織りだと人の手なので不揃いになるんですよ。均一にならないからこその風合いが、いちばんの特徴だと思います。

カジュアルなシーンからスーツに合うものまで、様々なデザインの手織りネクタイが揃う。

定番商品のなかで特に人気があるのは「カスリミックスタイ」というアイテム。着物の伝統的な「絣織」という技法を使ったもので、二色の縦糸と横糸を絡めるように織ることで、絶妙な色味が出るんです。ネイビーとブラウンの糸を混ぜるとパープルのように見えたり、光の反射で表情が変わる。こういう技法を使って手織りでネクタイを作っている会社は、世界でもKUSKAだけじゃないかと思います。そんなに儲からないからかもしれませんが(笑)。

伝統的な技法「絣織」に着想を得た「カスリミックスタイ」。 二色のシルク糸を絡めるように織ることで、複雑な反射が楽しめる。16,500円
新商品のネクタイは芯を薄くすることで軽やかな見た目と締め心地を実現。

写真ではわからない“良さ”が伝わる瞬間が嬉しい

今はインターネットで商品を買うことが主流になってきていますが、やっぱり実際にものを見て、触って、背景を知って得られる情報に自分はいちばん魅力を感じています。何が良いのかという部分がお客さんに伝わって、納得して購入してもらう瞬間がいちばん嬉しいですね。個人的には、20代くらいの若い方に織物に触れてもらって、喜んでもらいたい。発色の違いを実際に確かめてみてほしいです。

もちろん、一方的にこちらが伝えたいことを話してしまうと引いてしまう方もいると思うので(笑)、接客をする上で距離感には気をつけています。でも、僕自身は古着屋に通っていたとき、店主やちょっと怖い先輩に洋服のことを色々教えてもらって、そういうコミュニケーションが楽しかったんですよ。ちょっといいネクタイを探している人や、新入社員の方などに手織りの魅力を伝えられたら嬉しいです。

写真ではわからない“良さ”が伝わる瞬間が嬉しい 生産の背景から商品の特徴まで、ひとつひとつ説明してくれる向山さん。 気になることがあったら声をかけてみて。

KUSKAのコンセプトは「今のライフスタイルに合わせたネクタイ」。決まったスタイルやルールにとらわれず、アクセサリーのような感覚で楽しんでもらえたらいいなと思っています。礼服やスーツじゃなくても、ちょっとシャツにネクタイ締めてみようかな?という感じで、ぜひ気軽にのぞきに来てください!

Profile

向山 弦(むかいやま・げん)さん 

神奈川県出身。昨年4月にKUSKAの東京出店にあたって入社。服飾雑貨、木工雑貨の会社などを経て、『KUSKA & THE TANGO』の店長をつとめる。学生時代からの古着好きで、休日は同じく古着好きの奥さんと高円寺にショッピングに行くことも。趣味は映画鑑賞で、ウディ・アレンの『人生万歳!』などコメディが好き。OKUROJIで気になっているお店は、TEPPANYAKI 10 STEAK & LOBSTER。 

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