STORIES:OKUROJI
【Photographer's OKUROJI】#7
「NIIGATA1〇〇」で彼女と待ち合わせしたら

2021.01.27
写真家の在本彌生さんがOKUROJIを訪れ、撮影。彼女のフィルターを通して見た、OKUROJIの姿を写真とエッセイで綴ります。今回は『NIIGATA1〇〇』にフォーカス。
Photo & Text: Yayoi Arimoto

















「NIIGATA1〇〇」で彼女と待ち合わせしたら
今夜は彼女と銀座でディナー、だとしよう。仕事終わり、あるいは午後の用事をそれぞれが済ませてから、でもちょっとディナーまでは時間があるなというタイミングだったらどうしようか。カフェで待ち合わせるのもよし、バーでアペリティフを一杯いただくのもありだけど、しばしの時間でリトルトリップというのも気が利いたアイディアというも、おもいがけずちょっとした発見があると結構気分のいいものだ。
「NIIGATA1〇〇」は新潟のとびきりいいもの、美味しいものを集めた素敵な店だ。そう、とびきり素敵なのだ。ここは古式ゆかしい物産館的な店ではない。内装の隅々まで新潟産にこだわりながら、スタイリッシュにまとめ上げている。私などはここにいたら、あれこれ興味のあるものや欲しいものがあって目移りするばかりで、時間がかかって仕方がない。
例えば金物で有名な燕三条から寄せられた刃物の数々や、デザインが優れた便利な調理器具、グルーミング用品など、どれもいい、欲しい。ここには私だけでなく、どなたにとっても「これいいな」と思うものがあるように思う。例えば、母にいつもより持ちやすくて切れ味の良いピーラーを、とか、父や夫に出張に持って行ってもいいような上等な爪切り、とか、プレゼントを探しにきたらいいものがすぐに見つかりそうだ。器も土ものからガラスまで、新潟をベースに活動する作家のものを扱っていて楽しい。新潟は手仕事の豊かな土地なのだなと改めて感心する。まだまだ他にも、昔ながらの手法で作られた仕掛けのある艶やかな箪笥や、張り子でできた可愛らしいポチ袋まである。こんなポチ袋に入ったご祝儀とか頂いたらとても嬉しい、ああ、頂いてみたい。いずれのものにも歴史に支えられた洗練や品がある。都との間、北前船の流通が盛んだったお土地柄もあるのだろう、粋なものがずらり揃っている。
もうひとつ、新潟の名産といえば日本酒だ。日本酒を愛してやまない私、店内の角打ちコーナーで一杯いただかないではいられない。このコーナー、店内では一際目立つ一角だ。新潟の手仕事、組子が天井にまで施され、光が巧みに調整されている。白木の爽やかさも相まってモダンな雰囲気、なんともニクい演出だ。
新潟ご出身の唎酒師、中村茉莉奈さんに好みを伝えると、トクトクトクと酒を注いでくれる。欲張りな私はこの日、鶴齢飲み比べセットを選んだ。あてには栃尾の油揚げの味噌漬けを。中村さん、お若いのに日本酒の個性をよくご存知で、新潟のお酒の話あれこれを伺いながらちびりちびり。新潟という土地のことを色々と質問しながら楽しい会話と共に飲めるのが楽しい。銀座にいながら新潟に行きたくなる、NIIGATA1〇〇はそんなお店だ。
Profile
在本彌生(ありもと・やよい)
東京生まれ。外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真と出会う。以降、時間と場所を問わず驚きと発見のビジョンを表現出来る写真の世界に夢中になる。美しく奇妙、クールで暖かい魅力的な被写体を求め、世界を飛び回り続けている。2006年5月よりフリーランスフォトグラファーとして活動を開始。雑誌多数、カタログ、CDジャケット、TVCM、広告、展覧会にて活動中。
http://yayoiarimoto.jp/photo/fashion/